スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

創業60年、時代のニーズをとらえる施策とは?

福島県/大喜建築有限会社
代表取締役 大樂 久善さん

先代は生粋の大工というルーツを持つ大喜建築。その古き良き本物の技術力を受け継ぎながら、今の感覚にも刺さる家づくりを手がけていらっしゃいます。3代目となる代表取締役の大樂久善さんは、まさにその立役者。先代の頃から今も現役で活躍されている職人さんたちと一緒に、新たな取り組みに奮闘されています。その中で大切にされていること、活用されているツールなどについてうかがいました。



お客さまの需要も高まっている無垢材へのこだわり

大喜建築が手がける家は、どれもふんだんに使った木の温もりに満ちているのが印象的です。「うちはハウスメーカーとは違って、決まった建材で仕上げるのではなく、少しでも無垢のものを使ったり、シックハウスにならない材料などをこだわって使うようにしていますが、ここ何年かは無垢材にこだわるお客さまが非常に増えていますね」と大樂さん。新建材ばかりに頼らずに、できるだけ自然素材を使おうというところに、代々受け継がれた職人魂を感じます。

「お客さまには、やっぱり無垢の良さを肌で体感してもらいたいと思っています。普通にクロス張りにするよりも板張りのご提案をしたり、全部クロスで良いというようなお客さまにも、アクセントとして天然素材の杉を少しだけ壁や天井に張るご提案をしたりしています」

内装材に関しては、まだウッドショックの影響は感じていないそうですが、さまざまな資材もコストが上がっている昨今。それでも、こうして家の性能やデザインへのこだわりをお客さまに伝えていく姿勢は、これからも崩さずにいきたいといいます。

「お客さまには嘘をつかずに、今の現状を正直にお話ししています。今後はまたいろいろと値上がりがあるでしょうから、それにどう立ち向かっていくかなんでしょうけれど。お客さまにいい住宅を提案するために、私はできる限り木を使っていきたいなと思っていますね」

その仕上がりの雰囲気も、触り心地もやっぱり違う無垢の木の内装材による仕上げは、大喜建築が大事にしているものの一つ。近年はお施主さまのニーズも高まっている。

そんな大樂さんには、指導者としての顔も。現在、地元の職業訓練校で講師もされているのです。

「免許も持っているので、実は営業よりも職人を育てるほうが得意分野なんです。事業主から大工さんになりたい若い人たちを預かって教えている学校なので、そこからうちの会社に来なよとか、そういう勧誘はできないんですけど(笑)。ただ、その若い職人さんたちが卒業して各工務店に戻って、そこから卒業した仲間同士で地域を盛り上げていってもらえたらなと感じています」

ご自身は、子どもの頃からお祖父さまが仕事をする姿を現場に行って目の当たりにしながら、「楽しそうだな。学校を卒業したら大工さんになろう!」と思って育ったそう。

「やはり大工さんの技術というのは、今後なくなってはいけないものだと思うので。その技術を若い人たちにもしっかり身につけて欲しいと思っています!」



伝統の技術と新しい技術をいかに組み合わせるか

こうして先代から代々受け継がれてきた技術、在来工法も大事にしながら、「これからの時代は、国が進めるゼロエネルギー住宅(ZEH)とか、そういったものにも取り組んでいかなくちゃいけない」と、今のお客さまに求められる新しい技術も積極的に取り入れているのは、大喜建築の大きな強みになっています。

「ゼロエネルギー住宅の基準を確保して補助金をいただくためには、やはり在来工法だけでは難しいところがありました。それで、LIXILのスーパーウォールを活用することにしたんです。在来工法や大工さんの技術も活かしながら、それを組み合わせてやれば、ゼロエネルギー住宅も実現できるんじゃないかということで」

言うは易しですが、最初は試行錯誤、ご苦労も多かったといいます。

「弊社にいるのは、やはり昔からの技術を磨いてきた職人なので、『この設計通りにやってね』といっても、なかなか受け入れられないところもあったんです。たとえば木と木を組み合わせるときに金物を使って補強するというのも、最初は『そういうものはいらないんだ』と言われたりしました。でも、今の時代はこういう金物を使って、耐震とかそういうことも考慮してやっていかないといけないんだということを私のほうからていねいに説明して、なんとか理解してもらいながら……」

そんな職人さんたちの意識が変わってきたのは、実際に建てられたお施主さまの生の声を聞いたことが大きかったようです。

「完成見学会には、お施主さまのところへうちの職人たちもスタッフとして一緒に行き、お客さまのご案内やご説明などをしています。そのときに、お施主さまから『やっぱり夏は涼しくて冬は暖かい。ランニングコストも安く生活できていますよ』というお話を直接うかがうと、『ああ、これからはこういった家づくりが主流になってくるのかな』と感じるところがあったと思います。今は率先してやってもらっていますよ」

大喜建築では、「大喜の家(Daiki-house)」としてスーパーウォール工法によるゼロエネルギー住宅を提供しています。木造軸組工法をベースに高性能SWパネルを組み合わせた高気密・高断熱・高耐震の住宅には硬質ウレタンフォームを採用し、無結露を35年保証。新築の主軸となっています。

「実際、スーパーウォールは耐震性も高いですし、省エネ性、断熱性もいい。そのうえ施工も早いですからね。大工さんの手間もかからず、工期を早く仕上げることができるというのはメリットだなぁと思っています」と大樂さん。これからも大喜建築ではゼロエネルギー住宅の標準化を進めていきたいといいます。



新築のご依頼に「BDAC=Style」を活用 ※BDACサービスは2024年12月13日で終了しました

以前はリフォームの依頼が大半だったという大喜建築ですが、近年は新築の依頼も増えてきています。そのきっかけは、ある若いお施主さまでした。築40年のご実家をとり壊して、新たに二世帯住宅を建てたいというご依頼だったそうです。

「ご実家は、陽当たりも悪く、風の通りも良くない、地盤も悪いということで、どうしたら快適な二世帯住宅が建てられるだろうかというご相談でした。お若いだけに、デザインにも非常にこだわりがあるお施主さまだったので使ってみることに。設計監理のコスト面を抑えられ、在来工法・スーパーウォールとセットにもしやすい『BDAC=Style』はすごく魅力的だったんです」

偶然も重なりました。そのお施主さまが「BDAC=Style」に登録されている建築家のひとり、瀬野和広さんをご存知で、「こんな方にプランを考えてもらえるの!?」と驚かれていたのです。そのインパクトも大きく、正式に依頼を受けることになって、瀬野さんが行なうことになりました。

「『BDAC=Style』はゼロエネルギー住宅とも相性がいいですし、補助金の申請などもすべてLIXILのZEH設計サポートを使わせてもらったので、私が何か申請をするための時間などもかからずに進められて、それはすごく強いところだなぁと思いました」と大樂さん。ゼロエネルギー住宅を希望されるお施主さまには、これからも「BDAC=Style」を採用していくといいます。
※LIXILのZEH設計サポート 詳しくはこちら

実際のところ、これまで60年の歴史がある自社の技術には自信があるものの、新築の提案力に関しては、少し弱いと感じていたところもあるのだとか。

「私たちで仕上げさえすれば、みなさまにご満足いただける技術はあると自負しています。ただ、新築の場合、そこに至るまでの第一段階、お客さまへの提案の部分で難しいところがありました。提案力不足が原因で、ほかのおしゃれなデザイン会社さんに新築がとられてしまったり、ハウスメーカーさんと比べられて逃してしまうことが多かったんです……」

実力のある建築家がコンセプトと基本デザインの提案をし、実際の施工管理など具体的な形にしていく部分は自社で仕上げることができる「BDAC=Style」は、まさにその弱いと感じる部分を絶妙に補ってくれるものだったといいます。

「うちの職人たちもやりやすかったと思います。これまでも建築家さんの仕事はしてきましたが、その設計のまま指示通りに施工するため、納まり等で悩んでしまうことがありました。『BDAC=Style』の場合は、提案だけしてもらったあとは自由にできるので、管理している私としても、非常にやりやすいですね」



お施主さまの満足が次の依頼につながっていく

「BDAC=Style」を採用し、基本デザインを建築家の瀬野さんが担当したお宅は、その後のお打ち合わせや部材選定、施工、管理に関しては大喜建築が手がけています。「デザインと技術のコラボレーションで、お求めやすい価格で理想のお住まいが実現できました」と大樂さん。

「お施主さまだけではなく、私自身も瀬野先生にお願いしたいなと思っていたのは、家づくりに木をふんだんに使ってくれるところです。逆に、木を使いなさいという感じなので。木を扱う仕事が増えれば、私たちの得意分野も増えますからね」

 随所に散りばめられたこだわり、デザインも仕上げも素晴らしいお宅ですが、その中でも特にインパクトがあるのは土間のキッチン。リビングよりも一段下がっているので、お料理をしながらリビングで寛ぐご家族と目線が合うというしかけになっています。

「瀬野先生は古き良き時代のリビングのイメージから、この土間のキッチンを計画されたようです。玄関のすぐ脇にあって、お子さんたちは部屋に上がる前にそこで勉強もできるし、奥さまが食事の支度をしながら勉強を見てあげられるという土間スタイルの提案でした」

こちらのお宅はお施主さまも大満足だったようで、ご自身のインスタグラムでもいろいろ発信してくださっているのだとか。そこでは、「悔しいけどスーパーウォールはなかなかいい」とか、「地震でもこんなに揺れないのか!」といった機能性にも言及されているそう。

「そのお施主さまをきっかけにして、新築の受注もとれるようになってきました。ゼロエネルギー住宅はお客さまからのご要望があるケースはまだまだ少ないのですが、やはりこちらからもご提案はしていきたいなと考えています。ご相談に来られたお客さまには、まずスーパーウォールのご説明をさせていただき、そのあと新宿にあるリクシルの住まいStudioに行って体感していただくというのが、いつもの流れですね」

まさに、心を込めて仕上げたお宅のお施主さまが広告塔になって、次のお客さまにつなげていただけるありがたい関係性が築かれている大喜建築。その培ってきた技術への誇りと、時代の流れに柔軟に対応していく姿には、見習うべきところも多いのではないでしょうか。