スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

脱炭素時代、資材ショック禍に資金計画はどう進める?

栃木県/株式会社井上住建
代表取締役 井上 光章さん

この脱炭素時代にますます高性能化する住宅、一方でウッドショックなど資材不足も問題になっている昨今、お客さまにどのような提案をするべきか悩む場面も増えているのではないでしょうか。その中でも重要なのは、やはり予算組みです。栃木県の井上住建では、相談に来られたお客さまの資金計画を3回目のお打ち合わせで行いますが、その際活躍するのがライフプランシュミレーションソフト「住マイルFP名人」。代表取締役の井上光章さんは、「うちの家は超高性能で値段も高いから、これを使わないと売れないんですよ」とおっしゃいます。お客さまとの信頼関係にもつながる資金計画の進め方の秘訣をうかがいました。

■ご活用ツール:#住マイルFP名人



ファイナンシャルプランナーと開くセミナーで覚えた違和感

以前は、保険会社のファイナンシャルプランナーを招いて、住宅購入を検討されているお客さまにセミナーを開いていたこともある井上さん。ただ、2年ほど続けていた中では違和感を覚えたところも少なくなかったといいます。

「保険会社の方だから、やっぱり保険の話になっちゃうんですよね。資金計画をする上で、どうしても不安要素のほうが大きくなってしまう。それに、現実とは少し離れているとも感じました。そもそもうちはスーパーウォール工法を採用しているので、気密・断熱性が高く、光熱費が押さえられます。その差額のアップ分を計算に入れることをしたかったんですよね」

より現実に近い形での資金計画をシミュレーションしてお客さまに提示することができれば、ご予算もお客さまのライフプランの中で決めることができます。井上さんは、その実現のために「住マイルFP名人」の導入を決めました。

「ファイナンシャルプランナーさんは全国平均値を使って説明するので、現実とは合わない部分も出てきます。それぞれのお客さまの不安をとりのぞくには、個別にシミュレーションできたほうがいい。光熱費の差額は意外と大きいですからね。うちでは実際にこれまでのオーナーさまから光熱費のデータもとっているので、その実データを元にした話ができるんです」

井上住建を訪れるお客さまは、若い世代と中高年世代がだいたい半々。20~30代の若い世代、40代くらいまでは、やはり資金面を一番不安に感じているといいます。

「土地と建物の総額を出して、頭金がいくらで、いくら借りて、毎月いくら返済するかという話しかしないと、今住んでいるアパートの値段とはかけ離れていくんですよね。今のアパート代は生活できているから払える、でもそれ以上になっていくと、みなさんやっぱり怖いんです。よく宣伝している『月々の家賃と同じくらいで建てられる』というのは、かなり安い家じゃないと無理ですから」

ただ漠然と「今の家賃よりも高い月額返済ができるのか」という視点に立ってしまうと、どうしても不安が大きくなります。そこで実際に細かくライフプラン全体をシミュレーションしていくと、決して払えない金額ではないということに気づくのです。それを簡単な操作で可能にしてくれるのが、住マイルFP名人でした。



100歳までシミュレーションをしても、ほとんどは破綻しない

住マイルFP名人は、住宅購入の際にお施主さまごとのライフプランが提示できる、住宅業界に特化したファイナンシャル・プランニングソフト。老後のキャッシュフローレポートまで提示できて、お客さまが不安になりがちなところをしっかりフォローすることができるツールです。

「操作もすごく簡単なんですよね。車の買い替えから生命保険や学資保険まで、なんでも入れてシミュレーションできるので、お客さまにも興味を持っていただけます。それに、不安を口にするお客さまも、そのほとんどは100歳までシミュレーションをして破綻することがありません。ぎりぎりの方でも90歳くらいまでは問題ないことが多いですね。その頃には、お子さんも何歳になっているでしょう?という話になりますが」

特に、ご夫婦で公務員の方などは貯蓄が右肩上がりで何の問題もないのに、堅実で不安に思っている方は多いそうです。しかし、井上住建は高価格帯なので、中にはご予算的に厳しい方も。あるとき「どうしても井上住建で建てたい」という方がいて、こんなことがありました。

「自営業、個人事業主の職人さんだったのですが、ものすごい売り上げがあったわけではないので、シミュレーションをすると少しギリギリでした。でもその方には逆に、事業で使うトラックの買い替えなども全部入れてシミュレーションしたのを元に、売り上げ目標を立ててあげたんです。『これからこの目標を下回らないようにしないと、返済できませんよ』と言ってね」

奥さまも交えてかなり細かくシミュレーションをし、「何歳までは現役で仕事をしないといけない」だとか、「奥さまも何歳までパートをすれば、これだけ余裕ができる」といったことまでアドバイスをされて、最終的に井上住建でご契約に至ったといいます。

しかし一方で、細かなシミュレーションをしたあとで、最終的にはご契約に至らなかったケースもあるとか。

「今までに2組くらいいたかな。1組は定年後の方で、手持ちの現金で建てるタイプだったので、あまりシミュレーションの意味がなかった。もう1組は、うちでシミュレーションをして安心したのか、別の会社でもっと高い家を建てていました(笑)。ああ、もう1組、シミュレーションで安心したまま家を建てるのも止まっちゃって、保留中の方も…」

それでも、やはりシミュレーションに興味を持つお客さまは多く、「次のお打ち合わせで具体的な資金計画を立ててみましょう」と3回目のお打ち合わせにつなげるという意味でも、このツールを使うことによる恩恵は大きいようです。

お客さまにうかがって入力していくだけで、すぐにシュミレーションできる「住マイルFP名人」。加入している保険内容や車の購入予定など、いろいろな項目が入れられるのも好評。

たった2週間の勉強で3級FP技能検定の試験に合格!

本格的に住マイルFP名人を使い始めてから、もう4年ほど経つ井上さん。シミュレーションを重ねるうちに、その方の家族構成や年齢、平均的な給与を見れば、だいたいこれくらいになるかなというシミュレーションもわかるようになってきたといいます。

「これまで貯金ができなかった方でも、ちゃんと長期的なシミュレーションを見せてあげると、今まで何も意識しなかったからお金がたまらなかっただけで、ちゃんとお金はあるんだということがわかります。『今日から貯めればいいんですよ。毎月家賃を5万円払っているなら、住宅ローンが今日から始まったと思って、その差額分を貯金してください』というお話をしていますね」

そうしてすっかり使いこなされている中、昨年4月に住マイルFP名人の使い方セミナーを受けられた井上さん。そこで新たな目標もできました。それは、FP技能検定の資格をとることです。

「住マイルFP名人を使ってお客さまにお話ししているのに、FPの資格も持っていないのがずっと気になっていたんですよ。そしたらセミナーで、先生に『FP技能検定の3級なら比較的簡単なので受けてみると良いですよ』と教えてもらって。そうか!と思って、さっそく受けてみました」

資格用のテキストを取り寄せて、独学で勉強をすること2週間。まさに有言実行で、1発合格を決めた井上さん。もうFP技能検定3級の肩書きを、堂々と名刺やホームページに載せることだってできます。

「テキストは1冊だけ買って、あとはネットで勉強しました。今はYouTubeなんかで対策授業が無料で観れますからね。それに、出るのは過去問ばかりですから。住マイルFP名人を使っている方は、この資格も取ってみることをおすすめしますね」



全体の予算は、詳細プランの提案前に割り出すのを基本に

将来まで続く資金計画が重要になる若い世代で、「この方ならシミュレーションすれば破綻しないし、ご契約できそうだ」という方には、積極的に住マイルFP名人を使うそうですが、逆に中高年層で長期的なシミュレーションの必要がない方には、OB顧客との関係性を見せるような、また違ったアプローチをしているという井上さん。住マイルFP名人の導入をおすすめする会社についても聞いてみました。

「やっぱり若い人向けに商売をされている方ですよね、あと、高い商品を売っている会社。それから、顧客満足度を上げたい会社にもおすすめです。やっぱり、シミュレーションできるとお客さまも安心できますからね」

モデルルームを持たない井上住建では、過去に建てたオーナーさま宅の見学会がご紹介方法の主軸。OB顧客との良好な関係性の構築は、今後の売り上げにも関わってくるのです。もちろん、顧客満足度を上げ、一人ひとりのお客さまとの信頼関係を築くことが重要なのは、どの会社も同じでしょう。

モデルルームを持たない井上住建では、建てていただいたお客さまのお宅の完成見学会を開くのが基本。そんなOB顧客との良好な関係も、営業の大きな強みに。

「最初はね、このシミュレーションって本当に正しいのかな?とも思っていたんですよ。でも、未来予想図って、結局ご本人が描いていかなくちゃいけないもので。今、真っ白な何もない状況よりは、今の現状から描けるものをとりあえずつくってあげるだけで、それが大きいんです。このタイミングでいろいろなことがわかるというのは、お客さまにとっても価値があることだと思いますよ」

実際にシミュレーションをしてみると、お子さんが何人かいれば、それぞれのお子さんの大学進学などで支出のピークがあることもわかるし、そのあと退職金が出れば、その支出の山の部分が削られて、将来的には暮らしていくのに問題がないことなども可視化できます。塵も積もれば山となるで、少額の収入でも奥さまがパートに出れば、家計がこれだけ助かるということもわかったりするのです。

こうしたお話をするタイミングとしては、3回目のお打ち合わせが基本なのだそう。まず1回目では、お客さまのご相談を中心にうかがって、2回目は家づくりにおける自社のこだわりについての話を。そして3回目のお約束をするときに、「次は保険や退職金の具体的な金額もお持ちいただいて、資金計画のシミュレーションをしてみましょう」と伝えているそうです。

「具体的なご要望を聞いて図面を起こす前に、『お金の計画をきちんと立てましょう』というお話をします。シミュレーションをしたら、そのまま『事前審査をしてみましょうか』という流れに。そうすれば、こちらとしても安心してご提案できますからね」

予算を立てたら、イメージに近いオーナーさま宅を3軒ほど見学していただき、ご要望をうかがって提案に落とし込んでいきます。

「お客さまのご要望を先に聞いてしまうと、家って予算関係なくでかくなっちゃいますから。まずは全体をロックして、その中で建てられる家にすれば、のちのち大きな変更が出てくることもありません。実際に見学をすると、『ああ、うちもこういうふうにしたいな』というのが出てくるので、『今度、図面をつくってみますか?』と言いやすいですよね。うちでは、図面をつくる段階で5万円頂く形をとっています」

このコロナ禍では、なかなか見学会ができない時期もあり、新築のお客さまが見込めない事態も起きていますが、その間はリフォームでフォローしているといいます。リフォームのご依頼はOB顧客からのご紹介も多いそうで、それもまた信頼関係につながる話。FPという一つの強みを持つことは、この大変な時代を生き抜くための武器にもなると言えそうです。