スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖
コロナ後も続けたい、新たな発見はありましたか?
この2年ほど、どの業界にも多大な影響を及ぼし続けた新型コロナウイルス。そこでは逆風が吹き荒れる一方で追い風もあり、独自の施策に成功している企業も少なくありません。千葉県の印旛郡栄町に本社を構える株式会社住工房スタイルでは、東京都内から移住されるお客さまが増えているといいます。「潜在的な新規顧客を育てていくために、『KASIKA』を活用しています」と教えてくださったのは、代表取締役社長の野口浩さん。コロナ前、コロナ禍でのとり組み、さらにはコロナ後も実施予定の施策についてうかがいました。
■ご活用ツール: #KASIKA
改めて意識した「郊外」というキーワード
感染対策でリモートワークを取り入れる企業が増え、必ずしも都心に家を構える必要がなくなってきた昨今、「『郊外』がキーワードになってきたのを肌で感じる」という野口さん。風光明媚なベッドタウンという土地柄、もともと東京都内からの移住組のお客さまも多かった住工房スタイルですが、このコロナ禍ではさらに増えているようです。
「2021年は2月にモデルルームをオープンしたのですが、それがまた都内の方にうまくはまったようで、来場者のうち9割が都内在住の方でした」
そうふり返る野口さんですが、お客さまとのお打ち合わせをビデオ会議サービス「Zoom」でするようになったのは、コロナ禍に差し掛かってからのこと。それまではリモートのやりとりにそこまで積極的ではありませんでした。ところが、Zoomを使うと都内在住の方と最初のヒアリングをするハードルも大きく下がることがわかったのです。
「うちは田舎なので、都内のお客さまと最初のセッティングをするのが難しいところがありました。『見学できるお家がありますよ!』と言っても、なかなか。こちらまで来ていただくのは大変なので、都内のお打ち合わせスペースを確保してアポをとることも多かったんです」
「でもZoomなら、そのハードルはかなり下がります。場所だけでなく時間帯も、わざわざ昼間にする必要はなく、『夜ごはんを食べる前にちょっと空いた1時間だけお話をしましょう』ということが可能になりました。お客さまも『とりあえず話だけしてみようかな』と、気軽に予定が組めるのではないかと思います」
早期にZoomを取り入れ、お客さまとのお打ち合わせが早くできるようになった結果、近隣の競合他社はそのスピード感についてくることができず、住工房スタイルでご成約に至る例が増えているといいます。
デジタル化が競合他社を引き離す大きな強みに
こうしてコロナ禍でのリモートのやりとりにいち早く対応できたのは、それ以前にデジタルツールを導入していたことと無関係ではないようです。住工房スタイルが営業に「KASIKA」を導入したのは、日本で初めて緊急事態宣言が出される半年ほど前、2019年秋のことでした。
KASIKAは、見込み顧客のメールマガジンへの反応やネット上での閲覧動向などをリアルタイムに分析し、本当のニーズを可視化することができるマーケティングオートメーションツール(MAツール)。住工房スタイルでは、メールマガジンの配信とあわせて活用しています。
「KASIKA自体はとても操作が簡単なのですが、それを日々使っているうちにパソコン作業に慣れ、Zoomも抵抗感なく取り入れられたところがあると思います。今でこそ誰でも使っているZoomですが、当時はまだみんな使い始めの頃だったので」
最初は、Zoomを使って住宅の見学会をオンラインで開く試みから始めました。そこで見に来てくれる方が想像以上に多いことがわかり、Zoomでのヒアリングも開始。2020年の2月には、もうZoomでのお打ち合わせがメインになっていました。
「KASIKAを導入する前は、不動産の大手ポータルサイトに多額の広告費を割いていました。そこから月に50~100件くらいの資料請求がきて、見学会を実施すると毎回10組くらいは来ていただく感じです。ただ、その打率は悪く、そういった流れで来るお客さまでご成約に至るのは、全体の3割ほどでした」
現在は、主に全国区の住宅・インテリア雑誌や地元のタウン誌などへ定期的に掲載。ロードサイド看板や駅看板のQRコードからも、意外と多くのアクセスがあります。
そこではKASIKAをフル活用。定期的に配信するメールマガジンのほか、そうしたさまざまな媒体へのアクセスからそれぞれの見込み顧客の反応に合わせてシナリオメールも自動配信しています。最終的には、営業担当からピンポイントで直接ご連絡をする形です。
現在、問い合わせの数は月20~30件ほどに落ち着いているものの、その打率は6~7割。自社のホームページに直接アクセスしてくる反応のいいお客さまも増えて、非常に効果の高い営業活動につながっています。
「お客さまからのお問い合わせも、以前より早く感じます。『ホームぺージを見ているな』と思ったら、『あ、もう資料請求がきた!』みたいな感じですよ」
自分自身も“可視化”され、その効果を体感
実は野口さんがKASIKAの導入をご検討された際、その実力を思い知る出来事がありました。 「最初に存在を知ったのは、導入を決める1年半ほど前のことです。何の名簿からだったのか、KASIKAの案内が私にメールできたんですよ。工務店に特化したMAツールということで、興味がわきました」
そこで、すぐに詳しい資料を取り寄せたという野口さん。しかし、申し込みはしないままになっていました。
「ずっと、気にはなっていました。もともとうちでは1000人ほどいる管理顧客にメルマガを一斉送信する顧客管理ソフトを使っていたんです。見学会の案内や、現場の特徴なんかを記事にして、定期的に送るものでした。それがなかなか大変だったんですけど、一方的に送るだけで、反応もいまいちわからなかったんです」
せっかく苦労して作成するメールマガジンも、ちゃんとメールを開いて読んでくれているのかどうかがわからず、誰が興味を持ってくれているのか整理がつかない状態だったといいます。
しかしKASIKAは、誰がその商品に興味を持っているかをひと目でわかるように可視化し、より可能性の高い見込み顧客をリストの中でもランクアップさせていくような仕組みになっています。野口さんはKASIKAの案内メールが届くたびに、改めてその内容を確認して、実際に導入された方の記事を読んで検討を重ねました。
「すでに最初のメールから1年半ほど経った頃、これはやっぱり導入したほうが良いかもしれないと本腰を入れて情報を見始めました。そうしたら、すぐに営業の方から直接連絡が来たんです……。そう、私自身が“可視化”されていたんですよ!」
ずっと興味があったものの、心は決まっていなかったところから、いざ本腰を入れて検討に入ったタイミングでの、もうひと押し。そこで詳しい話を聞いてみると、良心的な金額感も含めてやっぱり良さそうだということになり、そのまま導入することを決めたのでした。
「ここぞというタイミングでアプローチされて、そのまま成約。私自身が、このツールの良さを体感した形となりました」
公式ホームぺージには、敢えてすべてを載せない
KASIKAは、今では営業になくてはならない存在になっているといいます。さらに住工房スタイルでは、このコロナ禍に足踏みすることなく、自社のブランディングも進めてきました。以前は施工事例だけではなく、住宅性能についてのテクニカルな情報なども載せていたホームページを一新。テーマを絞って、ブラッシュアップを図ったそうです。
コンセプトは、「郊外での暮らし」。環境に溶け込む美しいデザインの住宅設計も目を引きますが、薪ストーブやサウナなど、郊外のロケーションならではの暮らしが体現できるツールもさまざま用意されているのが見て取れます。開いていくだけで視覚的に暮らしがイメージでき、ワクワクさせてくれるようなホームページとなりました。
「今のホームページは、ライフスタイルが中心。施工事例の写真をメインに展開しています。以前は気密断熱や耐震などの住宅性能について、認定住宅であることについても細かく紹介していたのですが、今は敢えて載せていません」
「そこで、メルマガが活きてきます。ホームページで住工房スタイルらしい家のデザインや暮らし方に興味を持っていただいたら、今度はメルマガで『実は住宅性能にもこれだけこだわっているんですよ』ということもアピールしていくんです」
ホームページのほか、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSも運用しつつ、そこでの発信はライフスタイルに留めて、メルマガでは詳しい住宅性能情報もプラスしていくアプローチ。コロナ禍では見学会などのイベントがしにくくなった分、施工事例もさまざま配信するようになり、メルマガの本数も増えました。KASIKAとの合わせ技で見込み客の動向を探り、営業力の向上につなげています。
「ブランディングとあわせてKASIKAを導入したことで、資料請求していただく数ではなく、お客さまの質みたいなものが上がった気がします。たぶんこの方はうちに合うなというお客さまが、可視化されてよくわかるんですよ」
具体的にプランなどをご提案する際にも、その方がどういうものに興味を持って見ていたかが可視化されるので、とても参考になるのだとか。
「私もデジタルが得意だったわけではないので、操作が簡単な扱いやすい設計になっているのも良かった点です。それに、わからなくても手厚くサポートしてもらえるので。運用に対しての具体的なアドバイスなどもいただけるので、非常に助かっていますよ」
野口さんからは、「ものづくりへのこだわりがある工務店ほど、そこにマッチするお客さまを導き出すKASIKAは力を発揮するのではないか」というお話しもありました。これからも、そんな自社の魅力発信にますます磨きをかけていくことになりそうです。