スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

平均建物単価3000万超!良いお客さまとの出会い方。

群馬県/株式会社関工務所
専務取締役 関 敏孝さん

群馬県で、創業120年。「長期優良住宅、ZEHなどを取り扱う工務店のなかでは群馬県でもかなり上のほうにいると思いますよ」と語るのは、関工務所の関 敏孝さんです。自社で現在15名の大工を抱えながら、独立されていった方々とも連携し、毎年のように入ってくる新人を育成。その確かな技術力を土台としながら、地元での信頼も厚い工務店です。高価格帯の上質な住宅をご契約いただくための秘訣と、その心構えを教えてもらいました。

■ご活用ツール:#KASIKA



土地持ちのお客さまが大多数を占めるわけ

住宅の販売価格帯としては、「最低でも3000万円以上、だいたい3500万円前後をみています」という関さん。その価格帯での販売を成功させている秘訣は、どんなところにあるのでしょうか。地域性もありますが、関工務所でご契約されるお客さまのほとんどが土地をお持ちのケースが多いというのも特筆すべき点です。

「基本的なルールとして、うちは社内に15人いる大工と、これまで4代続いてきた中で独立していった関係性のある大工が4組ほどいて、その中で家づくりをするので、受注できたからといってどこかから人を探してくるというスタンスではありません。そういうことは避けているので、今がめいっぱいで、棟数はそんなに増やせないんです」

現在受注されているのは、年間30棟ほど。建てられる棟数が限られるからこそ、価格帯の維持は重要だといいます。

「3000万円の家も2000万円の家も、かける労力ってそんなに変わらないんですよね。それでも利益としては大きく変わってしまうので、会社を経営するには3000万円のほうをつくりたい。じゃあ、そのためにはどうすればいいかというと、当然、性能とかデザイン、技術という部分で、3000万円出してもらえるような形にしていかなければなりません。そのことを常に考えてきました」

以前は年間10棟、20棟の受注だったところから、この5年ほどで30棟までになったという関工務所。しっかりとした大工の技術力をベースに、この地域でもいち早く長期優良住宅の認定を受け、ZEHにも取り組んできました。

「良いものをつくるという精神は、創業当初から受け継いできたものでもあります。あとは、質のいいデザインが加えられれば、お客さまに見ていただけて、注文してもらえるものになるのかなというふうに考えています」

大事にされているのは、お客さまにご満足いただけて価格にも見合う、上質なものづくり。その上で、広告や見学会の告知を出す媒体も見極めています。

「あまり安っぽいような、変なところには広告を出さないようにしています。そういうところで見てくる人というのは、ほとんどお客さまにならないので、結局無駄な労力になってしまうことが多いんですよ。今載せているのは、大手の住宅情報誌と地元の新聞社1社だけ。あとは『KASHIKA』も使っているので、そこで見学会の情報やモデルハウスの情報をずっと見ているお客さまを見つけたら、お誘いのメールをするようにしているくらいですね」

最終的にGood Living友の会で提供している住宅業界向けMAツール「KASHIKA」を使って顧客を見極め、あまり見込みのない追客はしないというスタンス。資料請求が年間300組ほどある中で、そのうち180組ほどが見学会やモデルハウスに来場し、最終的に30組ほどが契約に至るという計算だといいます。

住宅街の中にある新モデルハウスは、延床面積約36坪、長期優良住宅仕様。光と風をコントロールしたパッシブデザインがコンセプトであり見どころの一つ。(クリックすると別タブで画像を開きます)

「実は、コロナ禍になる前は来場者が160いかないくらいだったんです。見学会はもともと予約制だったので、コロナ禍も変わらず開催しているのですが、なぜか人数が増えているんですよ。逆に、資料請求自体は前よりも減ってきています」

資料請求ばかりが増えても契約の確率を下げるだけだった過去の経験からも、今がベストの状態。きちんと的を絞った告知によってお客さまの層も維持され、確実な集客へとつながっているようです。

「うちでは、簡単にすぐに図面を引くということはしません。お客さまには、まず現場の見学会に2回以上は出ていただくというステップを踏んでもらっています。そこで『すぐ図面をつくってよ』というお客さまは、たとえ言う通りにしたとしても結局ダメになってしまうことが多いんですよ」

2回の見学会に参加してもらって本当に気にいっていただけたお客さまには、最初に資金計画を実施。そこでしっかり予算感も把握していただいた上で、さらに進めたいということになれば、お申込金30万円をいただいてからこまかなところを詰めていきます。現在の限られた人員で、およそ30という年間目標棟数をこなしていくことを考えても、効率的と言えるのではないでしょうか。



25年前から専属のWEB担当をおいてきた強み

代々受け継がれてきた技術と信頼、そして今なお進化し続けている実績の数々。それらを陰で支えているものの一つに、関工務所のホームページがあります。まず驚かされるのが、その情報量の多さと充実した内容です。

「最近、外部のデザイナーを入れてホームページをリニューアルしたのですが、そのベースになったものは、もう25年くらい前につくったのが最初です。現在もWEB関係の担当をしてもらっている女性には、その当時から専任の担当としてやってもらっているんですよ」

25年ほど前、関工務所の代表取締役(当時)が群馬県木造住宅産業協会の会長に就任したことを受け、自社のホームページくらいなければという話になったのがきっかけでした。そのときに縁あって知り合ったWEBデザイナーの女性を起用。ホームページを立ち上げ、それ以来彼女がWEB関係の専任者となっています。そこから長きにわたり、社員みんなでこまごまと考えて構成してきた内容が、現在の立派なホームページの土台になっているのです。

「そのWEB担当者に、今ではインスタグラムやユーチューブなどのSNSでの発信もお願いしていますが、定期的にKASHIKAで送るメルマガや、チラシ制作なども、全部手がけてもらっています」

関工務所のデザインの考え方をまとめたページには、「目指しているデザインは一時的に流行っているようなものではなく、本質的に美しさを感じていただけるようなデザインです」とありますが、その言葉通り、それぞれに心地好い時間が約束された美しい実例写真が並んでいます。改めて関工務所のデザインのスタイルについてうかがうと、こんな答えが返ってきました。

「それぞれの事例には設計者の名前が入っているので、お客さまから『このテイストが好きだから』とご指名いただくこともあります。ただ、私の考えとしては、あんまり偏った設計をしたくないというのがあるんですよ。『この会社って、こういう形しかできないんだな』というような。やっぱり、お一人おひとりのお客さまのご要望に合わせて、ある程度いろんな形やスタイルがご提案できる設計をしていきたいなと思っています」



今後はOB顧客へのアプローチにも力を入れていく

これからの目標として、OB顧客に向けたさらなるアプローチを挙げた関さん。すでに、隔月で情報誌を送っているほか、毎年オリジナルのカレンダーもつくって送っているそうですが、このコロナ禍で2年ほどできていないというのがOB顧客を招待する感謝祭です。

「毎年、大バーベキュー大会を開いていました。600人も700人も来るので、かなり大がかりですよ。横に厨房施設がついている芝の広場を借りて、テントを張ってやるんです」

OB顧客600~700人を招待していた恒例のバーベキュー大会。川場村の自然が満喫できる楽しい一日。

そうしてアプローチできるOB顧客としては、現在1000軒ほど。そのうち800軒ほどまわっています。

「昔はアフターサービスといって、1年後に大工さんと一緒にまわっていました。そこでいろいろ点検したり、床下に入ってみたりして、もし何か不具合があると対処するわけですが、それを社に持ち帰って、『こういうことをしてしまうと、こういうことになるから気をつけよう』といったことを会議で共有していたんです」

それらはすべて口頭で行なわれているそうで、データの蓄積としては素晴らしいものがありますが、何かまとまったデータにできていないのは今後の課題だといいます。

「顧客の管理もこれまではデータ化していなかったのですが、だんだん棟数が多くなってきたとき、リクシルさんに『管理ってどうしてるんですか?』と聞かれて、そういえばデータにしていないなと気づきました。『リフォームにつなげていくためにも、ちゃんとまとめて抱え込んでおいたほうがいいですよ』と言われて、『スマイルパートナー』制度をスタートしました」  

関工務所では現在、お客様係のスマイルパートナーが毎年1~2回以上OB顧客を訪問し、お困りごとをうかがったり、イベントの案内を行ったりしています。今ではOB顧客はすべてリスト化され、どのエリアをいつまわって、実際どんな不具合が起きたかということも、データとしてまとめられているそうです。

「月に2回会議があるんですけど、そこで全部、報告のリストが上がってくるので、担当者とチェックをして、スケジュール調整などももれなく行えるようになりました。うちはこうしてリクシルさんに指導してもらって、本当に良かったなと思っていますよ」

住宅に不具合があると、もちろんお客さまからは叱られることになりますが、そのあとが肝心だという関さん。

「不具合があったら、もちろん大変なんですけど。そこでしっかり経費をかけて修理をして、終わってしまえば、そこからはお互いいい関係になるので。『今度はちょっとリフォームを頼みますよ』ということにもなる。データをきちんとまとめたことで、会社としてもそうしたフォローができるようになったのは大きいですね」

資材も高騰している昨今、新築ばかりではなくリフォームの施工も受けていきたいところですが、関工務所ではそこもOB顧客層へのアプローチが主流になっているといいます。

「よく『ネットで見てきました』とリフォームの見積もりを依頼されたりするのですが、そういう新規のお客さまはたいてい契約につながらないんです。でも、OB顧客の方だと、ちゃんと信頼してもらっているので多少割高になってもご契約いただけるというか。ご紹介いただくことも多いですしね。そういう意味でも、フォローはものすごく大事だと痛感しています。そこからだんだん広げていけば、必ず仕事になるので」

実は現在、新たに社屋を計画中で、新社屋完成後これまでの社屋をリフォーム専門館にする計画が進行しているのだとか。

「これからリフォームはだんだん増える。増えなきゃいけないと思っているし、実際そんなに宣伝もせずに増えてきているので、ホームページのほうも実例写真などをもっとブラッシュアップしていきたいと思っています」

「うちは何も特別なことはしていない」とおっしゃる関さんですが、ホームページもOB顧客リストのデータ化も、先を見据えて一つずつしっかり構築してきたことが、今の上向きの業績につながっていることは間違いありません。



希望者は全員採用!大工を育てる環境づくり

大工などの職人不足が住宅業界でも問題視されている昨今。その中で自社の大工による施工を基本にしている関工務所は一見、有利なようでもありますが、そこでは育成の問題が避けては通れません。

「うちの社長の考えで、基本的に大工になりたい人は全員採用します。群馬県の高校にネットワークがあるので、毎年夏頃になると『今年は採用しますか?』と必ずくるんですよ。工業高校が多いですね。今年も4月から3人入りました」

福利厚生もしっかりしている社員として雇われる募集なので、学校側も安心して勧められるところがあるのかも知れません。毎年のように新人が入ってきているといいます。

「ただ、全員が全員、ちゃんとした大工になれるかっていうと、そうではなくて。たいていは1年で挫折しちゃうんですよ。大工になるためにはやっぱり修行というか、結構いろんなことを学ばなきゃいけなかったり、技術的なものや体力的な部分も必要になるので。夏は暑いし、冬は寒い。それを1年耐えられれば、なんとかなるかなという感じですかね。もちろん1年では一人前にはなれなくて、最低でも5年はかかります」

当初は、会社として親方・棟梁になれる人材を育てようと思っていたという関さん。「でも、そこまでいけない子もいるので。そういう子たちもちゃんと居られる環境を会社としてつくっておかないといけない」と、これまでにもいろいろ試行錯誤されてきたそう。働く環境としても、時代とともに変わっている部分があるといいます。

「大工という仕事が好きでも、その待遇みたいなものがまわりの人と差がありすぎて、ついていけない、だから辞めさせてくれという話があって。それはまずかったなと思って、たとえば昔は土日出ることも多かったのですが、今の若い子たちは5年間の修業中、うちでは完全週休2日制なんですよ。ただ、親方になると、あとは自分が働けば働いただけ稼げる状況になるので、社内的には週休2日なんだけど、土曜出てやる人もいる。それはちゃんと届け出てもらえばいいよという形をとっています」

それでも、入った新人のうちの半分以上は辞めていってしまうという厳しい世界。その分、最後まで残っている人材は本当に優秀だといいます。

「おかげさまで、中規模木造の公共事業なども手がけています。これまでに幼稚園や学校、役所や庁舎も、木造でつくっていますよ。うちの社長はもともと設計事務所上がりなので、その横のつながりから声がかかったりするんです」

新築住宅やリフォームはもちろん、公共事業まで。幅広く手がけている関工務所だけに、競合になるのは地元の大手ハウスメーカーも多いそう。

「弊社でも手がけている長期優良住宅やZEHは大手ハウスメーカーなら当たり前ですが、金額的な面や、デザイン的に満足できないお客さまがいて。そこがねらい目だと考えています。そういう、もっとデザインされた家に住みたいなという人たちに、性能もしっかりしているうちが刺さるのではないでしょうか」

自社の強みをしっかり見極めて、会社の規模などは関係なく、勝負すべきところで勝負していく。そんな攻めの姿勢にも、成功への足がかりがありそうです。