スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

仲介から新築まで。ワンストップのスピード感と提案力を強みに!

大阪府/株式会社福屋工務店
代表取締役社長 巣山 一 さん

創業60年を迎える福屋工務店。不動産仲介からスタートし、いまではリフォーム・新築までを手がける総合工務店へと規模を拡大させています。「大事なのは人。社員の成長が一番大事です」と語るのは、代表取締役社長の巣山一さん。社長就任後は、CGパースを活用した提案や外装リフォームの仕組み化など、さまざまな工夫で受注を伸ばしてきました。スピード感のあるサービスを軸に、ここ数年で急成長している同社の取り組みを伺います。

#経営ビジョン #提案力強化 #リフォーム改革 #ワンストップサービス




年間8棟だった新築事業を70棟へ!100棟への道

「私がここへ来た頃、新築の年間完工棟数は8棟ほどでした。もう、伸びしろしかありませんよね」

2018年12月の就任当時を、そう振り返る代表取締役社長の巣山一さん。その言葉通り、今期は70棟を見込むまでに新築事業の規模を成長させています。今後の目標としては、このまま100棟、200棟と「伸ばしきれるところまで伸ばしたい」とのこと。さらに本格的な強化に乗り出す意向です。

巣山さんが福屋工務店でまず取り組んだのは、リフォーム事業と新築事業の切り離しでした。それまではリフォームをメインで手がけながら、ときどき新築を手がけている状態だったといいます。実際にリフォームと新築では違う部分が多いので、しっかり切り離すことでより効率的な事業形態になっていきました。

「以前は毎日ずっとリフォームの営業をして、依頼が来たら新築をやるという二刀流でした。でも、新築とリフォームは似て非なるもの。一流の大谷翔平を会社で40人50人つくれるはずがないんですよね。そこでリフォームと新築、それぞれの一流になってもらえるように分離したんです。そのあたりから、新築の棟数がぐっと増えました」

さらに設計も、それまで全面的に外注に頼っていた体制を改めました。現在、社には5人の設計士が在籍しています。彼らをどのように育てていくか、社内設計が成長できる環境をいかにしてつくっていくかは、今後の課題。ちょうど今、システム面でのサポートを整えているところだといいます。

新築の8~9割は注文住宅ですが、一部で建売住宅も手がけています。主に大阪市内の狭小地などで、付加価値の高い建売住宅を開発している「Fプロジェクト」は、プロの技の見せどころ。注文住宅では新しいアイデアや提案が予算などで却下されてしまうことがままありますが、プロとして純粋に良いものが追求できる建売は、社内設計士の技量や提案力を高めることにもつながっているのです。

「私自身も転職したから今ここにいるわけですが、自分の成長が感じられる間は、転職ってあまり考えないと思うんですよね」と巣山さん。やりがいのある仕事、社員が成長できる場をつくっていくことこそが、人材の流出を防ぐ手立て。それが会社の成長にもつながっていくという考えです。

福屋工務店が最初に手がけた狭小地の物件は、近くのタワーマンションの中古が5000~6000万円ほどで購入されていると見込み、そこに対抗できる戸建ての建売住宅を目指しました。床を大理石にしたり、3階の上にはバーベキューもできる屋上バルコニーを設計したりと充実したつくりになっています。

「グループ会社の福屋不動産販売からは、『そんな値段じゃ絶対に売れない!』と言われたのですが、意外や意外、建築中に売れてしまいました。もちろん、あれを10軒建てて10軒売れと言われたら厳しいかもしれませんが、1棟売れればいいわけですからね」

その「1人でも気に入ってくれるお客さまがいれば十分」という思い切った割り切りが、実際の成果につながった形です。


優しく、美しく、心地よい住まいを。福屋工務店の注文住宅(クリックすると別タブで画像を開きます)

少額案件を整理して効率化!リフォーム改革の舞台裏

当時の福屋工務店は、年間約2000件を手掛けるリフォーム事業の効率化も大きな課題でした。鍵や水栓の交換だけだったり、ハウスクリーニングだけだったりと単価が低いものが多く、移動時間にも多大なコストがかかっていたといいます。

「ある日、営業所へ行くと3万円ほどの見積書がポンと置いてあって、どこまで行くのか聞いたら、片道2時間くらいかけて行くというんです。2時間かけて行って、その商談をするのは5分10分ほど、そこからまた2時間かけて帰ってくるわけですよ。それでその一日が終わってしまう。そんなことが非常に多くありました」

それを賄えるだけの人員体制であるなら可能ですが、グループ会社の福屋不動産販売の営業が約500人いる一方で、福屋工務店の営業は40人ほど。この少ない人数で少額案件に対応していたため、本当はもっと時間をかけるべき顧客との打ち合わせや、質の高い提案をするための時間も十分に確保しにくい状況でした。

「以前は、仲介で預かったものはすべてやっていたんです。ところが、社員だけではできないので、業者さんに直接行ってもらうことになる。いつの間にか業者さんが現場で見積もりをして、下手をするとお客さんと直接商談をして、福屋工務店の社員は事務作業ばかりするような状態に。もともと工務店の社員というのは建築業を志して来ていますから、それは面白くないですよね」

社員の仕事に対するモチベーションを上げ、離職率を減らしていくためにも、そのやり方を見直すことは急務でした。

まず決断したのが業務の切り分けです。鍵交換やハウスクリーニングなどの少額案件は、グループ会社である福屋ライフサービスへ移管することに。福屋工務店としては、より規模が大きく、専門性が生かせるリフォーム事業に専念する方向へ舵を切りました。

さらに外装リフォームでは、標準化と仕組み化を推進。案件ごとに数値などを入力すれば自動で見積りが出るシステムを導入し、それまでは属人的なところがあった積算作業を一気に効率化しました。

「以前はその都度、塗装屋さんに依頼をして見積もりをとっていましたが、当然カラ見積りになることもあります。それが続くと嫌がられますし、高いものにもなりかねない。それでいまは、延べ床面積を出して塗料をグレード別に選べば、自動で金額が出せるようにシステム化しました。それで写真を見ながら、『ここにこれだけクラックが入っていると雨が入る可能性があります』とか、『屋根もふき替えか、塗装をされたほうが良いでしょう』といった具体的な話をしていくわけです」

そうしてスピーディな見積り提示ができるようになったことで、顧客からの信頼も獲得。年間で10件に満たなかった外装リフォームの受注が、いまでは月に10件を超える規模となっています。社員も小さな雑務に追われることなく、本来やるべき仕事に集中できるようになりました。


明解に塗装の金額感がわかるシステムを独自に構築して取り入れたことで、積算にとられる時間を大幅に短縮(クリックすると別タブで画像を開きます)

CG活用で見える化!顧客に伝わる提案力を強化

リフォームでも新築でも、提案の際の肝になるのは「どれだけ鮮明に完成後のイメージを伝えられるか」です。福屋工務店では、CGパースを活用した3Dの可視化システムによる提案をいち早くとり入れています。

「お客さまにとって、いい悪いを平面や立面図だけで判断するって、なかなかできないことですよね。どれだけいい提案をしても、評価していただけないことがある。この可視化システムは、それを分かりやすくするためのツールだと思います」

打ち合わせでプレゼンをするときは、目の前のお客さまだけを見ているのではないと巣山さんはいいます。

「お打ち合わせをさせていただく方は、当然、我々が一生懸命説明しますから、ご理解いただけると思うんです。でもそれを家に持ち帰ってお子さんに説明したり、同居されていないご両親にお話しするときには、我々と同じレベルで説明できませんよね。いまの中学生の女の子なんて、ひょっとすると主権者だったりします。娘さんが『気に入らない』と言ったら、ご両親は『じゃあ、やめておこうか』となる場合もあるんですよ」

プレゼンは、そこにいないご家族のこともイメージしながら。ツールとして、ぱっと見るだけで伝わるCGパースは、ご家族の納得を得るための大事な役割も担っているのです。

ある大型リノベーション案件では、大手ハウスメーカーと競合したこともありましたが、そこでも福屋工務店は持ち前のプレゼン力を発揮しました。

「そのお施主さまは特に耐震性を気にされていたので、それをしっかり提案に入れようとすると間取りなどの自由度が減り、きっと大手でも面白い提案はなかなかしにくいだろうと考えました」

そこで福屋工務店では、耐震性はもちろんのこと、断熱性などの提案もあらかじめ準備。さらには、多忙なご夫婦とお子さんとの生活を考えて、防犯対策に関する提案も用意しておきました。

「ご要望は出ていなかったのですが、事前に大手警備会社2社に提案を依頼しておきました。プレゼンの最後にそれを伝えると、『忘れていたけど、とても大事ですね!』と非常に高く評価していただけたんです。こうして先回りをして、言われる前にこちらから考えて出すというのは、とても大事なことだと思います」

聞かれてから答えるのでは遅い。こちらから先に提案することが信頼感にもつながるというのが巣山さんの信念です。顧客の不安をできるだけ事前に解消しようとする姿勢が、他社との差別化につながっています。

そして、「このスピード感もポリシーの一つです」と巣山さん。実はこのプレゼン時、仲介は福屋だったものの、競合したその大手ハウスメーカーの方が先に動き出していたのだそうです。

「まずは状況を確かめようと、もう直接、ローンを組む銀行に聞きに行ったんです。そうしたら、『ちょっと言いにくいんですけど、福屋さんは土俵外の戦い方をしないと』って。それを聞いて実際に何をやったかと言えば、スピード勝負です。向こうが次にアポイントをとるまで1か月かかっている間に、うちは毎週お会いして、もうショールームの案内をする段階にいました」

大手が数週間かけて検討するところを、最短日数で次々にプランを提示。そこから修正を重ねて完成度を高めていく――このスピード感がまた、お施主さまの心をわしづかみにしたのでしょう。


長年のノウハウを生かし、お施主さまの思いを形にするリノベーションをプランニング。希望と現実、住み心地の良さをコストとともに追求していくのが福屋流(クリックすると別タブで画像を開きます)

仲介から新築まで!ワンストップサービスの強み

不動産仲介業からはじまった福屋工務店でしたが、中古物件を扱うと必ず修繕やリフォームが必要になってくることから、リフォームにも対応するようになっていったそうです。仲介からリフォームへ、さらにはその設計力を伸ばして新築まで手がけるようになり、いまの福屋工務店のスタイルが形づくられていきました。

仲介からスタートした会社だからこそ、顧客が住宅購入時に抱える不安、たとえば「購入後にリフォームはできるのか」「建て替えたほうがいいのか」といったことに、ワンストップで応えられる体制を早くから整えてきたといいます。

「物件の価格はあらかじめ打ち出しているので分かりますが、リフォームでいくらかかるのか、その総額を聞いた上で、お客さまは自己資金と借り入れで事前のローン審査をするわけで、そこに時間を要するんですね。それから見積もりを出すわけですが、土日にお客さまを物件にご案内し月曜に依頼が来ても、我々は火水休み、それで木金土になって、早くても出せるのは日曜になってしまうんです」

1週間も遅れれば、商談の熱も冷めてしまいます。そこで、「お客さまが現れる前に、事前の点検をして見積もりをしておけばいい」という考えに。福屋不動産販売の営業担当がご案内をした時点で、もうすでに「このグレードのキッチンやお風呂なら、リフォームしたらこれくらいの金額です」と提示できる状態にするシステムを確立しました。

「世の中にはたくさん不動産会社や建築会社がありますが、うちのようにグループでやっているところは少ないですよね。いわゆる一気通貫、ワンストップビジネスのような形で取り組みをしていますが、その部分は非常に大きいと感じています」

仲介からリフォーム、新築までも一気通貫でできる会社の強みを最大限に生かす福屋ホールディングス。仲介営業から情報が上がれば、その日のうちに工務店が現場を見て、数日後にはプランや見積もりを提示する。このスピード感がお客さまの安心につながっています。

一方で、顧客との接点を絶やさない工夫も。

「うちでは不動産販売の流通の閑散期を狙って、OBさんにDMを出したり、電話なりでご挨拶をしたりしています。個人的には、年賀状や暑中見舞いというのはDMだと思っていますよ。これだけ世の中で年賀状が減っていると、逆に目立っていいんです(笑)」

季節の挨拶をきっかけに、「こんな工事もできますよ」と伝える小さな積み重ねが、次の相談や受注につながっていきます。

大手ハウスメーカーと同じ土俵で戦うのではなく、仲介を出発点にしたワンストップ体制とスピード感で、誠意を尽くして顧客の信頼を勝ち取る。それが福屋工務店の強みであり、成長を支える原動力となっています。次の100棟、その先の200棟を目指し、これからも止まることのない挑戦は続きそうです。

【編集後記】

今回の取材を通じて、企業の競争力について考えさせられました。巣山社長の経営哲学には、他社ではなかなか真似のできない独自の価値創造の仕組みが凝縮されています。

不動産仲介と建築事業の連携が、単なる効率化を超えた戦略的強みを生んでいました。物件案内の時点で既にリフォーム見積もりを提示できるシステムは、商談の熱を冷ますことなく受注につなげる「先回りの提案力」。これこそが差別化要因と感じます。

少額案件をグループ会社に移管し、付加価値の高い業務に特化する判断は、社員のモチベーション向上と受注拡大につながり、建築業を志した社員が本来の力を発揮できる環境を整えることで、離職率改善と提案力向上を同時に実現されています。

年賀状や暑中見舞いを「DM」と捉え、OB顧客へのアプローチを仕組み化する発想はデジタル化が進む時代だからこそ、アナログなコミュニケーションが差別化要因になるようです。一度の取引で終わらせず、顧客のライフステージに合わせて継続的な価値を提供していく長期的関係構築こそが、持続的成長を支える競争優位性でしょう。

「大事なのは人。社員の成長が一番大事」という巣山社長の言葉が、すべての施策に一貫して流れていることに、経営者としての想いを感じます。

(N-LINKC  野口)