スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

攻め続けた先のマルチブランド化!年間100棟超の原点は「自分ごと」。

山形県/株式会社EXCEED GROUP
代表取締役社長 冨樫 宜信さん

設備関係を手がけていた会社で新築事業をゼロからスタート。独立、再度の合併を経て12年。今や3ブランドで年間100棟を超える規模まで成長させた株式会社EXCEED GROUP(エクシードグループ)。もともと新築事業に参入したきっかけは、代表取締役社長の冨樫宜信さんが自邸の家づくりを計画した中で味わった違和感からだといいます。徹底した「顧客視点」を軸に攻め続けたというさまざまな経営判断、これからの課題についても伺いました。

#顧客視点 #事業拡大 #マルチブランド戦略 #長期優良住宅




最初のお客様から口コミでつながった6軒のご成約

「新築事業への参入は、何もわからなかった僕が自分の家を建てようといろいろな住宅会社をまわっていたなかで感じた疑問がきっかけでした」

そう語るのは株式会社EXCEED GROUPの代表取締役社長、冨樫宜信さん。

「家づくり計画は大手ハウスメーカーさんと仮契約のような形で進んでいたのですが、土地の抽選が外れてしまって。そこで一度、計画が宙に浮いてしまったんです。そうしたら営業が手薄になってしまったというか……。『あれ?』という感じ、あるあるですよね」

「お客さん目線じゃないな、売れればいいの?というふうに僕には見えてしまったので」と、当時の思いを語る冨樫さん。当時は父が経営する公共事業などをメインに行っていた設備関係の会社に在籍していましたが、そこで住宅の新築事業をスタートさせました。自身の経験から感じた疑問、違和感が、その後の徹底した顧客視点につながっていったといいます。

もともとリフォームなどを手がけていたノウハウもあり、父の知人で定年退職した一級建築士とタッグを組んでの新築事業参入でした。まずは自邸と、冨樫さんの幼馴染みの家、建築士の甥っ子の家、計3棟を建てたのが最初です。それをモデルハウスとして見学会を実施したところから集客を開始しました。

「一軒一軒を大事にしながら本気でとり組んで、そこで分社化というか、新築事業で独立することに。父は50代、私はまだ20代後半の頃でした」

独立して1軒目の受注をしたときには、思わず「うちは実績ゼロの新しい会社ですが、良いのですか?」と聞いてしまったといいます。そうして心を込めて建てた1軒目ですが、その後その方の紹介で6棟も受注するに至ったのだそう。

「自分ごととして本当に親身にやらせていただきました。僕も勉強しながらだったので、信頼してお願いしていただいたことに応えたいなと思って一生懸命にとり組んだ記憶があります」

目の前のお客様と向き合い続けた結果、手がけることができた最初の6棟。それは実績がないからこそ、自分が施主だったらどう思うか、どうして欲しいかという原点を真摯に実践した結果でした。ふり返れば、当時はかなり原価にも近いような値段設定だったといいます。利益率もしっかり確保できるようになるまでには、それから数年を経ることとなりました。


それぞれに住む人のライフスタイルを感じさせる家々。遊び心あふれるデザイン設計が印象的な注文住宅「EXCEED HOME」(クリックすると別タブで画像を開きます)



選ばれるために進んだ「規模化」への道

当初は、まだそんなにいただける段階ではないという謙虚な気持ちから価格設定もかなり低かった新築事業。今でこそ利益率は30%を超えていますが、このままでは会社として続けられないと限界を感じた2~3年目、現在は専務を務める妻の美好(みよし)さんも本格的にチームの一員となり、利益率の改善をはかっていったといいます。

「妻はすでに宅建の資格をとっていたのですが、子育てをしながら建築士にも一発合格してくれて。もともとセンスが良かったのでコーディネーターとしても、デザイン性や内装の部分で力を発揮してくれていました。そんな妻にも新築事業に深く関わってもらうようになって利益率を見直し、ちゃんと商売として成り立つようになったのは5年目くらいだったと思います。2017年頃ですね」

その後のコロナ禍では3カ月ほど業務を停止せざるを得ない事態も発生していましたが、その間、契約していたお客様は一組も離れることなく、パートナー企業もひとつとして離れなかったのはうれしかったと語る冨樫さん。「この会社は絶対につぶすことはできない」と改めて心に誓い、一時は規模を縮小しながらも前に進んでいきました。

8年目には再び親会社と合併。「それまで攻め続けていたからこそ、そこでまた経営が良くなって攻め続けられた」と当時をふり返ります。その「攻め」の戦略のひとつは、規模化をすることでした。

「やっぱり、ある程度会社が規模化しないと選んでもらえないなとわかったので。家を建てようと思ったときにうちが想起されるかどうかで言うと、20~30棟は建てないと厳しいなと感じて。実際に8年目でそこまで到達できたのは、常に目標設定をしながらずっと走り続けてきたのが大きいと思います」

規模化のためには、採用も強化しています。もともと医療関係だった義弟が参画したのもちょうどその頃。以前の職場でデジタルを活用して業務改善につなげた実力を、いかんなく発揮してもらいました。

「彼には採用の中心になってもらい、そこから会社も急激に大きくなりました。結局は人ですよね。人がいないと売り上げも立たないわけですから。その頃入社した今のEXCEED HOME(エクシードホーム)の店長などは、これまで年間12~13棟ぐらいをアベレージでやってくれていますよ」

良い人材には、それだけの対価も。成果主義による大手にもひけをとらない年俸やボーナス、家族でハワイ旅行にも招待と、結果を出した社員には手厚い待遇が用意されています。「だから僕の給料が上がらないんですよ」と笑う冨樫さんですが、成長し続けるためには不可欠なことだと腹を決めているようです。

一方で、スピード感がある攻めの経営は社員としてもやりがいや楽しさがあるものの、そこについていくのはなかなか大変だという一面も。その分、新人賞などを用意してがんばる社員を応援する制度も整えているところですが、新卒採用からの教育面ではまだ課題も残っているといいます。

「地方でも大手に負けないような会社になるには、どこかを特化していかないと。うちが目指すのは『山形になくてはならない会社』。そして、『未来の世をつくる会社』です。父も、大雪が降れば除雪車両を貸し出すなど、昔から建設業を通して地域に貢献してきたのを見ているので、そういうことも大事にしたいですね」


良い人材の採用は、会社を規模化していくうえで欠かせないと語る冨樫さん。待遇の面でも 力を入れている(クリックすると別タブで画像を開きます)



デザイン特化で終わらない!マルチブランド戦略

EXCEED GROUPを代表するブランド「EXCEED HOME」の家づくりは、そのデザイン性の高さも大きな特徴です。その姿勢を象徴するのが、以前打ち出していた「“普通の家”が欲しい人には他社を紹介します」というかなり尖った内容のメッセージ。一部、ネット上ではお叱りの声も上がったとか。

「僕らはデザイン性、遊び心のある家以外は建てないと決めたので、そういうニーズのある人に本気で満足してもらって、家を通じて幸せになってもらうことが大事なんじゃないかと考えていたんです。『ニーズの合わない家を建てる必要はないよね』と。当時はめちゃくちゃ叩かれたんですけど(笑)」

ただ、会社の規模を大きくしていくなかでは、属人的な部分の大きいEXCEED HOMEのやり方だけでは賄い切れないところもありました。そんななか、親交を深めていた他県の同業トップ企業の社長から、「こだわりがあるのはいいけれど、いったい家を通して何をしたいの?」と問われたのだそう。

「そのとき、僕は家を通してお客さんの笑顔をつくりたいと言っているのに、なんだか僕の作品みたいになっちゃっているなと気づいたんです。確かに、普通の家が欲しい人もいる。コスパ最強の住宅を買って幸せになる人もいっぱいいるじゃん、と。『そういうニーズに応えられるものも展開していかないときついよ』と教えてもらって、それが転機になりました」

そこから新たに立ち上げたのが「BESTO HAUS(ベストハウス)」です。デザインや設計面ではEXCEED HOMEのノウハウを活かして組み立てられた、セミオーダー住宅のブランド。「EXCEED HOME」よりも規格寄りで再現性が高く、水平展開しやすいため、現在では4拠点で年間50棟ほどを受注しています。

2025年6月には規格住宅のFCブランド「PG HOUSE(ピージーハウス)」も立ち上げました。現在は2拠点展開で、目標は年間20棟ほど。EXCEED HOMEの年間30棟ほどをあわせると、合計100棟をゆうに超えるマルチブランド企業へと成長しています。


FCブランドである「PG HOUSE」も2拠点で展開。超耐震・超ZEH・完全自由設計の家が月々3万円台から実現できる内容となっている(クリックすると別タブで画像を開きます)

それだけ売り上げを伸ばした秘訣を聞くと、「やっぱり価格。それからわかりやすさ。高性能でランニングコストを下げ、保証を充実させています」と冨樫さん。構造計算や断熱性能、アップグレードしたものを標準にしている外壁の仕様や、60年保証など、価格はリーズナブルでありながら、その内容は大手ハウスメーカーとも変わらない内容になっているといいます。

「うちはネジ一本などあまり意味のない見積もりは一切取らずに、かなりシステマチックにしています。そこでもコスト削減をして、原価構成は一気に変わりましたね。あと、社員一人当たりの受注数が高い。たぶんそれぞれ年間9棟ぐらいは手がけています。それだけいい人材を採用してきたし、BESTO HAUSでは新卒2年目でも6~7棟までいく社員もいます」

また集客のための広告に力を入れてきたことも、EXCEED GROUPの成長を語るうえで欠かせません。創業当初から野点看板をたくさん出し、山形県の住宅企業と言えばエクシードというイメージをつくり上げてきたのも特徴的です。今では県内の同業他社からも多くの看板が出ていますが、その先陣を切っただけに、いい場所に設置できているのだそう。

もちろん、そのほかSNSも駆使し、コンサルタントを入れながら試行錯誤してきました。

「昔は山形も紙が主流でしたが、今は紙媒体はほぼ発行していません。インスタグラムやTikTokなどもいろいろやってきましたが、ホームページからの受注というのはほぼないですね。あとは、いわゆるバナー広告とか。今は売り上げ目標の4%くらいは、もう広告の予算として先行投資しています」

予算をかけるところには、しっかりかける。これだけ広告に力を入れられるのも、その先の目標の高さがあってこそでしょう。



長期優良住宅だからこそ考える住まいの可変性

アフターサービスとしては、年に一度開催しているEXCEED GROUPのOB感謝祭なども好評で、一日に1000人以上が訪れるそう。OB顧客との交流も大事にしています。

ただ、リノベーション事業に関しては「餅は餅屋」だと語る冨樫さん。「今は新築がいまいちだからリノベをやろうみたいな会社がすごく多いなと思うんですけど、めちゃくちゃ浅はかだなと思っています」という厳しい言葉も飛び出しました。

「属人性の高いものは人がいないと難しいので、リノベーション事業に関しては今のところうちではやりきれないと考えています。それはそれが得意な中小規模の工務店さんとかがやったほうが絶対にいいと思っていて。僕らは僕らで、新築で長く使えるいい家をリーズナブルに供給し続ける。あとは非住宅の案件も手がけていきたいと考えているので、そこはすみわけをしていくべきじゃないかなと」

自分たちが何を提供したいのか、何が得意なのかをしっかり分析し、そこでのプロフェッショナルになっていくことこそが会社を残していく道だというのが根底にある考え方です。

EXCEED GROUPの家づくりは、創業当初から「長期優良住宅」をベースにしてきました。そこでは性能面や耐久性はもちろん、「住まいの可変性」も重視しています。

「2階リビングも将来的には一階で過ごせるようにしたり、改装しやすいスケルトン・インフィルの考え方をご提案したりしています。うちでは2階建ての隣に平屋を建ててそれぞれモデルハウスにしていますが、そうして2棟を同時に見せることができるのも比較検討できていいですよ」


企画型注文住宅「BESTO HAUS」。平屋のモデルハウスの隣に、2階建てのモデルハウスを設けた試みなどもわかりやすいと好評(クリックすると別タブで画像を開きます)

昨今ブームになっている平屋。その長所を見極め、自分たちのライフスタイルとの相性を見るのに、両者が並んだモデルハウスは非常にわかりやすいといいます。

「2階建ては階段がそれぞれ2畳ほど上下にあるので、結局は30坪の2階建てと28坪の平屋で有効スペースが一緒なんですよね。両方を見てもらうと、『意外と平屋もいいね』と考えを変える方も増えています」

最近では、投資家と協業してリースバックができる仕組みも構築。モデルハウスをリーズナブルに販売し、数年後に買い戻すことでお互いウインウインの関係が築ける形となっています。会社としてはキャッシュアウトさせない有効な手立てにもなっているよう。

また、今年は地元の企業として声がかかり、サッカーチーム「モンディオ山形」とのパートナー契約も結びました。サポーター向けに住まいづくりの特典をつけるキャンペーンを行うなどしながら、地域の方々と一緒に地元を盛り上げていく相乗効果を期待しているところです。

今後はさらに採用も強化していくため、山形だけでなく仙台にも支店を置いて、魅力的な社員のロールモデル、将来像を構築していく構え。すでに次のステージを見据えています。

規模を追い、ここぞというところは攻め、企業としてあえて手を出さないところもブレずに決めて進む──。その経営判断に一貫しているのは、自社の立ち位置を明確にする姿勢でした。顧客視点を起点に、地域に根差しながら紆余曲折を経て着実に事業を広げているEXCEED GROUP。その選択の積み重ねには、学ぶところも多いのではないでしょうか。

【編集後記】

株式会社EXCEED GROUPの冨樫社長へのインタビューを終えて、最も印象に残ったのは「成長スピード」に対する潔い覚悟でした。

12年で年間100棟超という急成長。取材前から気になっていたのは、これだけの拡大を支える人材の採用・育成が追いついているのかという点でした。正直、「急成長の裏には必ず組織の歪みがあるはず」という先入観もありました。

しかし冨樫社長の答えは予想外でした。

「スピードについていけない人が出るのは仕方ない。でも、会社を嫌いにならないようにだけはしている」

この言葉に、経営者としての本質的な強さを感じました。成長を止めない、でも去る人を否定しない。このバランス感覚こそが、地方で大手に負けない企業を作り上げた秘訣なのでしょう。成果を出した社員への破格の待遇と、新人賞などで頑張る若手も応援する仕組み。それぞれのペースで成長できる環境を用意している点に感心しました。

原点は「自分ごと」の精神。最初の1軒目で「実績ゼロですが良いですか?」と正直に聞いてしまったエピソードが、今の100棟超につながっている。その誠実さと「攻め続ける」覚悟の両立が、EXCEED GROUPの強さなのだと実感したインタビューでした。

(聞き手・文:野口)