スペシャルインタビュー
住宅業界のトップランナーを徹底解剖

ウッドショックで変わったこと、変わらないことは?

富山県/有限会社クマガイ建創
代表取締役 熊谷 康祐さん

このまま長期化するのではないかとも言われるウッドショック。どんな対策をされていますか? 「木材だけではなく、ほかの建材も相次いで値上がりしているので、同じ予算では昔の感覚よりもだいぶコンパクトな家になってきています」 。 そんな実感をお話しいただいたのは、富山県で有限会社クマガイ建創を営まれている熊谷康祐さん。 持ち家住宅の延べ床面積の平均値では全国トップの富山県ですが、新しい世代のニーズには変化も起きているそう。 そんな中でどんなことに気をつけ、工夫されているのか、お話をうかがいました。

■ご活用ツール:#住宅模型



まずはお施主さまと共通認識を持つところから

お施主さまとのコミュニケーションを一番大切にされているという熊谷さん。 ウッドショック対策も、まずはその現状を知っていただくところから始めるといいます。

「これまでと同じような感覚で家づくりをしたら、予算は確実にオーバーします。 『これくらいの予算なら、だいたいこれぐらいの家が建てられるだろう』という感覚はお施主さまもお持ちなので、 それよりもだいぶコンパクトになるということを、最初のお打ち合わせからお話しするようにしています」

また、ヒアリングの仕方や設計の方向性にも、少しずつ変化が起きているよう。富山県という土地柄、 お父さまの代では70坪や90坪という大きなお宅、二世帯住宅も多かったのが、今では40坪以下の設計をすることも多くなり、 30代、40代の核家族世帯が中心に。ニーズとしても、昔よりもコンパクトな設計を求められることが増えているそうです。

「コンパクトな家でもより広く感じられるように、外に広がるような設計をしたりすることが増えました。 最近はウッドショックのことを考えて、あえて平屋をご提案することも。平屋は坪単価的には高いのですが、 今は材料費が高騰しているので、意外と見積もったら2階建てよりも安くつくれたりします。 30坪を切るようなコンパクトな平屋も結構たくさんつくりましたよ」

もちろん、2階建てのつもりで来られた方に平屋のご提案をすると最初は驚かれるといいます。 どちらかというと、男性はあまり平屋に対して抵抗がなく、女性は2階建てと逡巡される方が多いとか。 どちらにするか整理できなかった場合は2パターン設計してご提案することもありますが、 そこで平屋に決まれば最後まで迷いなく進まれるお施主さまがほとんどだといいます。

「でも、平屋はやっぱりそれなりに土地の坪数が必要になります。 その敷地を拝見させていただいて、ある程度広くて景観もよく、『これは平屋でも気持ちいいだろうな』と思ったときにご提案していますね」

ウッドショックの中、意外とコストが抑えられる可能性があるという平屋住宅。 クマガイ建創ならではの設計・デザインも光る仕上がりに

入会当初から利用している「住宅模型」

ウッドショックや核家族化で昔よりもコンパクトな住まいが求められているからこそ、 そこで心地好く過ごすためのデザインの工夫が求められる昨今。 お施主さまにとっては、それを平面図だけで把握するのが難しい局面も出てきているようです。

「ご要望としては、『家はコンパクトにしてもLDKは広くしてほしい』というのが一番多いですね。 昔は私の家も子ども部屋で8畳もあったりしましたが、今は大勢がそこで集まるような遊び方もしなくなったのか、 4畳くらいでも十分という感じがあります」

「富山は雪深いエリアですが、うちに来られる方はインスタグラムにアップしている写真などをご覧になって、 開口部が大きいイメージの方が多いようです。開放感のある吹き抜けなども人気ですね。今は家の気密や断熱性能も高いので、 そういったデザインもしやすくなっています」

「コロナ関係では、感染予防対策で玄関に入ってすぐのところに手洗い場を設けたり、 小さくてもいいから家でテレワークができる書斎を設けたいというお施主さまも増えました」

そうしたさまざまなご要望を盛り込んだ設計をお施主さまにプレゼンする際、 熊谷さんがGood Living友の会のツールから活用されているのが、住宅模型です。どのお施主さまの設計にも、 毎回「白模型」を注文。立体的な状態で最終確認をしていただいているそう。

「模型は手に取って見られるので、お施主さまにもイメージしやすく、実際わかりやすいと思います。 それに自分の家が模型になるというのは、やっぱりうれしいですよね。家づくりのお打合せは結構長くなりますが、 そこまでやった過程が最終的に模型という形になるので、一番よろこんでいただける場面です」



模型とグラフィックそれぞれの使いわけ

以前は社内でも住宅模型をつくられて、それをお打ち合わせでの説明用に使われていたという熊谷さん。 そちらは自社のストック用にして、あわせてツールの「白模型」も注文し、 そちらをお引渡しのときにお施主さまにプレゼントされていました。

「ツールでつくってもらうほうが精度も高く、キレイなので(笑)、そちらをプレゼント用にしていました。 今は会社にもストックがたまってきたので、説明用のものはもうつくっていません」

「うちはモデルハウスを持たない会社ですが、これまでつくった住宅の模型は打合せスペースなどに展示しています。 最初の入り口として、『こんな家がつくれるんだ』と期待感を高めるものになっていて、 お施主さまもワクワクしながらヒアリングに入っていただける感じがあります」

現在も最終の説明用を兼ねて、「白模型」のプレゼントは継続中。あえて白模型を選ばれているのは、 万が一のときは修正もでき、色などがついていないほうがイメージもふくらむのではないかという思いがあるようです。

「スキップフロアなどは、図面ではイメージがわかないところもあるようで、 最終的にこの模型で確認して、『こうなってるんだ』とおっしゃられるお施主さまがいてびっくりしたことがあります。 吹き抜けの感覚なども見ていただくとやっぱり『わぁ』となるし、立体になったほうがつかみやすいですよね」

「色みなどは、CADなどのグラフィックで制作してお見せするほうがわかりやすく、 修正などもしやすいのではないでしょうか。それぞれの長所が生きるところで使い分けて、プレゼンテーションに活用しています」

かつては時計やカップといったものをプレゼントしていた時代もあるそうですが、 やはり住宅模型が一番よろこんでもらえるといいます。

「アフターでお施主さまのお宅へ行くと、飾ってくれたりしていることも多いですね。1/50だと少し大きいので、 1/100サイズくらいがちょうどいいです。遊びにこられるお友達にもよろこばれるんじゃないでしょうか」

モデルハウスを持たなくても、打合せスペースに設計した住宅の模型が置いてあるとお施主様とのお話も弾むそう

心がけているのは、その敷地に建つ合理性

モデルハウスは持たず、施工したお宅を最後の土日だけお借りして、予約制の見学会を開いているクマガイ建創。 毎回2日で30組ほどご案内していたのが、コロナ禍では人数制限で20組ほどになり、当初はやはり苦戦されたそうです。

でもそこは、「あまり手を広げるのではなく、今使っているものを有効に利用していくしかない!」と、 忙しくてあまり更新できていなかったインスタグラムにも着手。施工例写真もしっかり上げられるようにしながら、完成写真を撮る際、 カメラマンに動画撮影も依頼して、より臨場感がある動画もインスタグラムで紹介するようになりました。

「ほかの会社さんのYouTubeを観たりして、『こういう撮り方はきれいだな』と思ったら、 それをカメラマンと話したりしながら、『もっとゆっくり撮ろう』とか『光の入れ方は、 もっとこんなふうにしたらいいんじゃないか』といったことを試行錯誤しながらやっています」

スタッフ9人、少数精鋭の建設会社として、大手企業の顧客層とはまた違った層をターゲットにしているという熊谷さん。 お施主さまとのお打ち合わせでは、早い段階で設計担当の方も入り、営業担当の方と2人態勢で進めていかれるそうです。

「ヒアリングは一番大切にしています。たとえば広いリビングとか、2つの子ども部屋と和室が欲しいとか、 言われたものをただはめ込んでいくなら、正直誰でもできると思っていて。そこにプラスアルファ、 何かお施主さまの想いを表現していけたらいいなと考えています」

「設計期間はヒアリングから最初にご提案するまで、だいたい1カ月から1カ月半いただいています。 止まった建物だけを見てつくっていてもだめで、やっぱり実際にその敷地を見に行って、 まわりの景観や光なども考えながら、合理的にその敷地に合ったオンリーワンのデザインに落とし込んでいかなければと思っています」

「あとはただ単に、地道につくり続けることだけです」

そんなふうにおっしゃる熊谷さんですが、お施主さまが満足されて、また別の方をご紹介いただけることが多いというのは、 その努力があってこそ。さらには、最終的に施工にまで至らなかった方からも、別のお施主さまをご紹介いただくことがあるのだとか。 その家づくりへのこだわりと、プレゼンテーションから伝わる熱意やの感動が、またそういった機会も生んでいるのではないでしょうか。